萩尾望都先生と芥川賞作家・朝比奈秋さんと対談が行われ、対談時の動画が2024年10月中旬以降に配信されます(リアルタイム配信ではありません)。
→サンショウウオの四十九日 新潮社 2024年7月12日(初出『新潮』2024年5月号)
→半神 小学館(小学館文庫)1996年9月10日(初出『プチフラワー』1984年1月号)
動画配信チケットはこちらで購入できます。会員登録しなくても、ゲスト購入で買えます。配信URLは配信開始直前に送られてきます。
→朝比奈秋さん×萩尾望都さん『サンショウウオの四十九日』『半神』特別対談
2024年上半期の芥川賞を受賞した朝比奈秋さんの「サンショウウオの四十九日」は結合双生児を主人公にした作品です。舞台は日本。神奈川県藤沢市近辺でしょうか。杏と瞬という姉妹です。二人の父親も胎児児胎児で双子の兄の体内に宿った状態で生まれてきて、後に手術で取り出されたという設定になっています。
“私/わたし”などの区別もあって双子のうちどちらの思考かわかるように書かれていますが、時折混沌とします。「意識」や「感覚」を他者と「区別する/共有する」描写が非常におもしろいです。見えているものは同じでも違う脳で受け止めている様子、片方が「寝ている」と認識するところなど、二人の特異な意識の流れを夢中で読みました。最初に姉妹の意外と平凡な生活の描写があることで、特異な話になっていくときの異化効果が高いです。
作者が医師で症例に詳しいのもまたポイントかと思います。実在の結合双生児の話が多数登場します。正直ベトちゃん・ドクちゃんくらいしか知らなかったので、今回、こんな多くの実例があること知り、読後ネットで調べてみました。すごい。共有する部分が狭い時に限っては分離手術はうまくいくものの失敗例も多いので分離しないことが多いようです。また分離を望まないケースもあるんですね。
最近発達障害の流れでよく聞くようになった「自他境界(パウンダリー)」や「固有感覚」といった言葉がもちろん直接出てくるわけではありませんが、織り込まれているようにも読めました。
「サンショウウオ」は陰陽魚(陰陽図)で検索すればわかると思います。このタイトルもなるほどと思います。
双子はマンガにおいては古くから人気のあるモチーフです。萩尾先生も大好きで、「ルルとミミ」以来、時々登場させています。結合双生児は「モザイク・ラセン」の天羽からです。「半神」は結合双生児を描いたマンガ作品としてはその16ページという驚異的な短さと併せて最高傑作だと思っていますが、この作品を描いた萩尾先生と結合双生児を描いて芥川賞を受賞した作家の対談なんて、興味深いことこの上ないです。楽しみです。
リアルイベント&配信にしてくれてもいいのになとも思いますが、見られるだけでありがたいです。おそらく文章でも何らかの形で登場するでしょう。
→書評「サンショウウオの四十九日」自己の境界を問い直すたくらみ(小澤英実)『朝日新聞』2024.8.10
→現役医師の朝比奈秋さん、デビュー作「私の盲端」インタビュー 口と肛門、一本でつながる残酷さ(朝日新聞 2022.4.27)