「日曜美術館」ビアズリーの回に萩尾先生が出演されました

2025年6月29日(日)9:00~9:45、NHK・Eテレで放送される「日曜美術館 ビアズリー 禁忌(タブー)の線/戦慄の白黒(モノクローム)」に萩尾望都先生が出演されました。描き手の視点からの解説、素晴らしかった。独特の感性と優しさがにじみ出ていて、ご講演等で拝見するいつもの萩尾先生らしい感じがしました。

ビアズリー 禁忌(タブー)の線/戦慄の白黒(モノクローム)
初回放送日:2025年6月29日
放送局:NHK Eテレ

死者の首を手に口づけをする狂気の女性…。戯曲「サロメ」の一場面を官能的に描いたモノクロームの挿絵が、19世紀末のイギリスに旋風を巻き起こした。オーブリー・ビアズリー(1872-1898)。精緻で流麗な線が奏でる耽美な作品は、100年以上たった今も鮮烈な印象を放つ。漫画家・萩尾望都が語る“悪魔的な線”の魅力とは。来日した世界有数のコレクションから、25歳で夭(よう)逝した奇才の“美の秘密”に迫る。

NHK+:配信は7月6日(日)9:45まで
再放送:Eテレ 7月6日(日) 20:00~20:45
NHKオンデマンド「日曜美術館」
NHKオンデマンドはAmazon Prime Video、Apple TV、U-NEXTなどで見ることもできます。

萩尾先生の出演シーン

冒頭ちょっと出られて、その後は放送開始後26分~31分のあたりで5分間くらい、そして最後に少し出られていまして、全体としては長めなご出演と感じました。とても嬉しかったです。

「ビアズリーは好きだけど怖い」「怖くて美しい絵」「この人は悪魔と契約したんだろうかと思うぐらい異世界を見せてくれる」

踊り手の褒美

踊り手の褒美

「お皿を抱えているのは腕だと思うのだけど、この毛はなんで描いたんだろう」「描いているうちに指が勝手に独走することがある。ビアズリーも独走して描いたんじゃないか」「指先に脳みそがあるんじゃないかと感じるときがある」

サロメの化粧II

サロメの化粧II

「構図が独特。円がきれいにとぐろを巻いているような感じに見える。動的な絵でおもしろい」「化粧台の縦線横線と窓の枠の縦線横線がそれを強調させている」「こんな構図は思いつかない」

「呼吸を止めて一気に引いた線。指先だけじゃない。肩から全部使って一気に引いた線。ホームランを打つようなもの。(絵を)じっと見て、まだ描いていない線が見つかると、その通りに手を動かす。」

プラトニックな嘆き

プラトニックな嘆き

「禍々(まがまが)しさ。ピアズリーは好きだけど怖い。見てはいけないものが描かれている。」

「ある種の怒りを感じる。世界に対する恐怖とか怒りとか。自分に対するものかもしれない。頭の中にあるものは絵を描くと出る。ビアズリーは怒りと恐怖みたいなものをずっと持っていたのではないか。」

最後にビアズリーファンへ向けて
「ビアズリー好きですと言ったら引く人もいるから用心して言ったほうがいい。でも、得難い作家だから、ビアズリーが好きだということはあなたの個性になります。」

女子美術大学の協力

撮影は萩尾先生が客員教授を務められる女子美術大学の相模原キャンパス図書館にて行われました。
撮影の模様は女子美のサイトにあがっています。

萩尾望都客員教授が「日曜美術館」ビアズリー特集に出演(6/29放送)

ビアズリーと萩尾先生

今回、ビアズリーの回で萩尾先生にお話をと考えたNHKの担当者のご慧眼に感服しました。例えば、山岸凉子先生の方がビアズリーの影響は感じられるんですが、なぜ萩尾先生を‥と。

放送で登場したのは「エヴァンズの遺書」予告カットと「残酷な神が支配する」の見開き一つだけでしたが、私は萩尾先生にはもっとビアズリーっぽい絵はあると思うのです。

「エヴァンズの遺書」予告カット『別冊少女コミック』1974年12月号
「残酷な神が支配する」小学館文庫 第2巻 p302~303
※放送されたものはベタの後も生々しい絵なので、原画からのスキャン画像と思われます。

「エヴァンズの遺書」予告カット『別冊少女コミック』1974年12月号
「残酷な神が支配する」小学館文庫 第2巻 p302~303

例えばこの辺、すごくビアズリーっぽくないですか?

「残酷な神が支配する」小学館文庫 第2巻 p53
「残酷な神が支配する」小学館文庫 第4巻 p72

直線の中に丸い線を描く手法は、アングレーム国際漫画祭の際の原画展で「窓」というテーマを取り上げたことでもわかると思いますが、萩尾先生、時折使われますね。

萩尾先生にお声がかかったのは、特にビアズリーが好きと大きく発言されていたようではないので、この「残酷な神が支配する」の絵のせいかなと思います。“残酷な”とあるだけにたいへん残酷でエグい絵が多い。そしてキレキレの絵だなぁと思っています。

萩尾先生の「サロメ」について

萩尾先生はオスカー・ワイルドの「サロメ」がお好きで、何度か描かれています。

「ユリイカ 詩と批評」1980年9月号「特集=オスカー・ワイルド」で8ページにわたり「サロメ」を描かれています。こちらはカラーの美しい絵です。1ページだけ新版の方の「金銀左岸」に収録されていますが、他は本に入ってないのですけれど、『ユリイカ』のこの号は古書で入手しやすくなっています。 →『ユリイカ』の「サロメ」

また、「サロメ20XX」という作品もあります。こちらで牢にとらわれるのはサロメの方です。サロメをプルトニウムに模せて描かれています。→「サロメ20XX」

萩尾先生が見ていた本

番組中で萩尾先生がご覧になっていた本はこちらです。
「異端の奇才 ビアズリー」青幻舎 2025.2.21

2025年2月15日(土)~5月11日(日)三菱一号館美術館で開かれていた「異端の奇才 ビアズリー」展の公式図録を兼ねた本です。

最後に

萩尾先生がテレビに出演されると、私たちもお姿を見られ、まだお元気にされているのだなぁと思います。とても安心します。テレビ局の皆様よろしくお願いします。

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