女子美「宇宙・人間・アート」萩尾望都先生特別講演会

女子美術大学アート・デザイン表現学科特別公開講座
「宇宙・人間・アート」萩尾望都先生特別講演会
2025年11月17日(月) 16:40~18:10

女子美術大学アート・デザイン表現学科特別公開講座の萩尾先生の講演会に参加してきました。今回は学生さんの講義に少数の一般申し込み者が混ぜてもらう形の講演会なのですが、申し込み開始から11分で終了してしまうという事態になっています。1~2年生の皆さんなので、内山先生の「「ポーの一族」読んだことがある人~」という呼びかけに、知らない学生さんたちの方が多かったので、まず萩尾先生から「ポーの一族」の紹介をされました。

「ポーの一族」とは

1972年「透き通った銀の髪」から始まり、40年ぶりに復活した後、また連載している。遅々として進まないのですが‥。

「ポーの一族」は吸血鬼の一族の話。考えたときに、パピプペポで始まる名字をもっているという設定でいたのだけど、姓はポーツネル、主人公の名はエドガーという。エドガーが途中で仲間を必要になったとき、エドガー・アラン・ポーが好きなので、アランが残っているので、流れでつけてしまった。

(50周年の原画展などで掲示されているので、ご存じの方も多いと思いますが、「ポーの一族」の登場人物一覧の図がスライドに映ると、会場がざわつきました。このキャラクターの数‥すごいですよね。内山先生が「これは今連載中のものは入っていないのですよね」と言うと、萩尾先生から「そうです。是非バージョン2を‥」とのことです。)

最初から、これ全部頭にあったわけではなく、最初はこんなに描かないはずだったのだけど、不思議なもので描いているうちに、どんどんエピソードが生まれていって、いつの間にかこんなふうになってしまった。よほどキャラクターがおもしろかったのではないかと思う。

「すきとおった銀の髪」

初出:『別冊少女コミック』1972年3月号

16枚の「ポーの一族」最初の短編。時代は19世紀の始めくらい。なぜこの時代にしたかというと、この頃ナポレオンがエジプト・ローマの方に遠征行って、バストカットのきれいなドレスを流行らせた。エンパイア・スタイルというものだが、このデザインがすごく好きで、そのドレスを描きたくて、この時代にした。私は(どの時代を描こうかという)時代背景はほとんどドレスで決めている。

ある少年が家庭教師との勉強をサボって家を出ると、いつもは人の住んでいない家にきれいな少女がいる。引っ越すのでその子とは別れてしまうのだけど、少年が大人になったときに、その少女にそっくりな少女に出会う。思わず「あなたはその人の娘さんかお孫さんですか?」と聞くのだけど、名前も同じだし、何十年経っても歳をとらない女の子らしい、というところでラストシーンになる。

石ノ森章太郎「きりとばらとほしと」

吸血鬼は歳をとらないので、あの姿のまま10年も20年も、100年も200年も生きていく。石ノ森章太郎先生の「きりとばらとほしと」という短編を描いていて、これが時をかけて生きる吸血鬼と女の子の話。女の子が吸血鬼になって、現代にもまだ生きている。そしてSFがかった未来に宇宙人が飛来するが、その時代にもまだ生きているというお話。短編ながら壮大なスケールでおもしろかった。吸血鬼は歳をとらない。ずっと同じ女の子が生きていけるというところが話を考えたときに頭の中で引っかかっていたのではないかと思う。

この女の子は100年前も生きていて、今も生きていて、100年後も生きている。ということは、その間の洋服をいっぱい描けるんだと。吸血鬼はやたら太ったり、歳をとったりしないので、同じ服が着られる。流行はあるけれども、おもしろいなと思った。

「ポーの村」

初出;『別冊少女コミック』1972年7月号

ある貴族の人が猟で森に入ったら、鹿と間違えて少女を撃ってしまう。死ぬのではないかと思ったけれど、その子のお兄さんと一緒に近くの村に招かれて行くと、その村から出ることが出来ない。少女は翌日にはもう治ってしまっていた。不思議な村だと思っていると、夜中に少年に襲われて血を吸われる。びっくりしていると「自分たちは「ポーの一族」という吸血鬼の一族である」と少年が言う。襲われた人はびっくりして「それでは自分も仲間に入るのか?」と聞いたら「あんたはドジだから仲間に入れない」と言われて帰らされてしまう。すごく不思議な体験をしたなと、もう一度その村を探すけれど見つからなかったと。そういうお話。

「グレンスミスの日記」

初出『別冊少女コミック』1972年8月号

ポーの村に迷い込んだ人はグレンスミスといい、歳をとって死んでしまうのだけれど、彼には娘と孫がいた。亡くなった後、孫が彼が残した日記を見た。中はたわいない日常の話だけれど、一つだけ、ポーの村に行って帰ってきたという話が書いてある。不思議な話だなと思ってずっと心の中に秘めて生きていく。戦争があって、ドイツの人と仲良くなって、結婚して、第一次世界大戦が始まっていくというように歴史が変わっていく。

「ポーの一族」

初出『別冊少女コミック』1972年9~12月号

これまでは短編だけれど、最初に編集者に「これが描きたい」と持っていった話。「ポーの一族」というタイトルで、海沿いの街に、吸血鬼の一家が仲間を増やそうとやってくる。その街の少年とポーの少年が出会う。結局、妹が殺されてしまい、両親も事故で死んでしまい、エドガーは一人ぼっちになってしまう。級友のアランを仲間に誘い入れて行ってしまうという話。

「メリーベルと銀のばら」

初出『別冊少女コミック』1973年1~3月号

エドガーも最初から吸血鬼だったわけではないので、彼の過去に何があったのだろう、という過去の話を描いた。だいたい100年かちょっと前。妹のメリーベルと一緒に森に捨てられていたのを、老ハンナに拾われてそこで育つ。老ハンナがポーの一族だった。成長して仲間に入ることになる。メリーベルとは途中で別れて、メリーベルを人間として育てるためにエドガーは一族の元に留まるのだが、結局お館が村人の襲撃にあってみんな殺されてしまう。エドガーとポーツネル男爵と妻のシーラが街の方に出てくる。エドガーは妹が忘れられなくて何度か様子を見に行ったりしているが、メリーベルの方は何も知らないまま人間として育っている。

「小鳥の巣」

初出『別冊少女コミック』1973年4~7月号

ポーの一族のエドガーとアランがドイツのギムナジウムに転入した。昔、二人が子供の頃を知っている少年を探しに来た。その少年はすでに死んでしまっているのだが、二人はまだそのことに気付いていない。寄宿舎に入り込んで、小鳥の巣に入り込んだ異物みたいな感じで学園を引っかき回す、という話。

「ランプトンは語る」

初出『別冊少女コミック』1975年7月号

19世紀の半ば過ぎに評判になった「ランプトンの肖像」という有名な絵がある。かわいらしい6~7歳くらいの絵が描かれていて、当時の雑誌等によく複写が載せられていた。その子のお父さんが記念にこの絵を描いてもらったのだけど、病気で早々に死んでしまう。絵がかわいらしいので切手になったり絵はがきになったりして残っている。これはランプトンの模写をもっている人の家の話で、アーサー卿という偏屈な人がお館に住んでいたが、そこに彼が残したたくさんの絵があった。その絵の中にランプトンのような少年が何度も出てくる。みんなでそれを研究する会のように集まって調べる話。

「春の夢」

初出『flowers』2016年7月号~2017年7月号

40年ぶりに復活した作品。1回終わったけれど、いろいろな偶然が重なってもう一度同じキャラクターで始めることにしました。第二次世界大戦の終わり頃の話。それから「秘密の花園」、次が「青のパンドラ」。連載を再開したのが2016年だったので「青のパンドラ」は2016年の話になっている。連載を再開してからもう10年経っている。

マンガのストーリーをどうつくるか

先日テレビ番組で「りぼん」の特集があり、読者がどんなふうにマンガを読むか。ティーンエイジ向けのマンガはほとんどが恋愛がテーマ。少女たちは恋愛が第一の興味の対象。恋愛の中で主人公がいろいろな人と知り合ったり、自分の性格をチェックしたり、成長していく。それに読者が寄り添って読んでいく。「ときめきトゥナイト」「姫ちゃんのリボン」といった作品の、ストーリーをどんなふうに読者が読んでいくのかをテレビで説明していた。気の弱い女の子が主人公で、その子が連載の中で成長していろいろなことを理解して元気になっていく。そうすると読んでいる子も元気になっていく。それをお母さんが「マンガを読むことでこの子はどんどん成長していった」という話をする。マンガはやはり感情を理解する、感情を表現することにすごく役に立つのだなと思った。

乙女ゲームもそういうことを集大成していろいろなことを変えた。マンガ家希望の人が乙女ゲームが好きで全部クリアしてしまい、自分ができる乙女ゲームがなくなってしまったので、仕方なく自分でつくろうと思った。ゲームをつくるには財力が足りないからマンガを描こうと思った。マンガを描いてデビューしたという人の話も出てくる。奥深い。

「恋愛」とは何か。

広辞苑「男女が互いに相手をこいしたうこと。また、の痛さを感じるさま。こい」
三省堂国語事典「お互いに恋しくて、愛を表現すること」
デジタル大辞泉「特定の人に特別の愛情を感じて恋い慕うこと。また、互いにそのような感情をもつこと」
広辞苑は「男女が互いに」と書いてあり、古いなと。今の時代に男女だけじゃない。
恋愛の歴史を調べてみた。「ロミオとジュリエット」「シラノ・ド・ベルジュラック」などから始まる。

17歳のときに映画「風と共に去りぬ」を観て、スカーレットの奔放な生き方に感銘を受けた。昭和の時代、結婚観や家庭をもつことに対して日本風な非常に厳しい縛りがあった。スカーレットはすごく好きな人がいるけれど、その人が結婚してくれないということがわかったら、さっさと別の男と結婚して子供をつくってしまう。その男が病死すると、また別の男を誘惑して生活のために結婚する。でもこの人も死んでしまう。その後、スカーレットをずっと狙っているレット・バトラーとついに結婚する。二人が幸せになるのかというと、そういうわけでもない。スカーレットは最初に好きだったアシュレーのことが忘れられない。家庭というのは、結婚したら円満になるのではないのかと思ったので、この波瀾万丈の人生はすごくびっくりした。最後に自分はレットが好きだということに気付くのだけれど、そのときもうレットは去ってしまう。スカーレットが「明日は明日の風が吹く」と言う。

恋愛というのは難しい。奔放であっても幸福になれないし、従順に従っていても幸福になれない。どの辺で折り合いをつければいいのか。結婚しても幸せになれない。最初に好きになった人をずっと忘れられないのに、ある日さっと冷めてしまう。やはりレット・バトラーが好きだったと気付くのに、レットの方は冷めてしまう。どうして思うようにいかないのだろう。

「ロミオとジュリエット」は純真なお話。知り合ってから本当に数日しかないのに恋をして死んでしまう。一番いい時期に恋愛して死んでしまう。

「天使の擬態」

初出:『プチフラワー』1984年11月号

「恋愛」をテーマにしたので恋愛の作品を出してきて説明しようとしたが、私には「恋愛」の作品はすごく少なくて、この「天使の擬態」は真面目に恋愛の話をしている。「天使」という架空のものが好きで、ずっと考えてきたけれど、ある日ふとこんな話はどうかなと思った。ずっと天使のことを考えていて、天使になりたいと思っている女の子がいる。どうしてそんなことを考えてしまうのか。誰がそれを理解してくれるのかということで物語が進行していく。

鎌倉の海で女の子が薬を飲んで死のうとしている。自分は死んで天使になりたいと思いながら眠る。ちょうど男の人が現れて、薬を吐き出させて助けてしまう。近くにあるその男の人の家に運ばれ、朝になった。男の人がやってきて説教をする。女の子は余計なことをしてと怒っている。何故この女の子は助けてもらったのに怒っているのだろう?


その子は横浜の大学の生徒で、その学校に海で助けた男の人がやってくる。新しく赴任してきたこの学校の生物学の教師で、二人は再会する。海辺で見たのとは違う彼女の面を見て、そんなに変な子ではないのだなと先生は思う。授業のとき、たまたま二人が同じVネックのセーターを着てくる。生徒たちがはやし立てる。彼女は怒ってセーターを脱いでしまう。二人の関係はそんなにはよくないという感じで進行するが、それでも毎日のように会っているので話は続いている。

鎌倉の八幡宮にお姉さんの安産のお守りを買いに行こうとして、先生と二人で八幡宮まで行く。駅で若い男とすれ違った時に、彼女が気になる様子で先生の方があれは誰なんだ?と思うけれど、彼女は何も言わない。助けてもらった家に行って、そこで天使の話をまたする。飛びたいと思って手を動かしていたら翼にならないかとか。なぜか女の子は天使にこだわる。そんな話をしている女の子がかわいく思えて、先生が思わずキスしてしまう。これは少女マンガの定番です。女の子は逃げてしまう。

彼女先生との距離ができてしまい、先生の方がもう少し穏やかに話をしようと言ってくるけれど、彼女と先生の距離感が行ったりきたりする。

彼女が風邪をひいてしまい家で伏せっていると、先生が鉢植えの花をもってお見舞いに訪ねてくる。すぐに先生は帰るけれど、彼女は追いかけて「バス停まで送る」と言う。二人で横浜の坂道をバス停まで歩きながら、彼女は告白を始める。前に好きだった人がいる。すごく好きだったけれど、妊娠してしまい子供を堕ろした。その後別れてしまった。つまり自分はそんなふうに恋愛に失敗した女なんだと。天使になりたいと言ってるけれど、子供を堕ろした人間が天使になりたいとか言うのは傲慢だと。先生に対して、私はこんな女です。あきれたでしょう?好きにならなくてもいいのよ?というマイナスのアプローチを続けている。先生はそれを聞きながら、天使というのはその子供のことだったんだとはたと気付く。お前はその子に翼が欲しかったんだろうと。彼女は言い当てられて、先生の胸にすがって泣きます。その後二人はうまく行きます。ハッピーエンドの恋愛です。

ハッピーエンドも一つのやり方だけれど。例えば「ロミオとジュリエット」は二人とも死んでしまうけれど、あれはハッピーエンドとも言う。恋が成就して死んでしまうわけだから。二人はどのように結ばれるのか、その時の気持ちはどうなのか。そういうことを含めて一緒になっても別れても死んでしまっても、ハッピーエンドのものはあるかもしれない。「嵐が丘」ヒースクリフとキャサリンの悲恋物語。かわいそうだけれどいい話。

「A-A’」

初出:『プリンセス』1981年8月号

主人公アデラドの夢から始まる。子供の頃の夢で、小さいときに黒馬と一緒に野原で暮らしていた。「ただ一人の友達だった」というから、周りにあまり人がいないようなところで育った。大切な馬が死んでしまった。彼女は夢を見ながら泣いているけれど、泣いて目覚めた彼女は何者かというと、クローン。元のアデラドがいて、そちらの身体が死んでしまったので、宇宙開発局か何かが用意しておいた鋳型のボディ、つまりAの次のA’を目覚めさせたところ。

私は小学校の頃からSFが好きで読んでいた。SFにも流行りすたりがあって、ひと頃はロボットがよく出てきたけれど、やがてクローンが出てくる。いろいろな作家がクローンを書いている。手塚先生も描いている。同じ性格のクローンがいくつも増えていくから、四人兄弟のクローンとか出てきたりする。一人が死んでも大丈夫、次がいるからと、すぐ次のクローンがでてくる。未来すごいなぁと。本当にクローン技術が発達して、もし亡くなってしまっても複製があるということだったらどうなるか、という設定でもってこの話を考え始めた。

宇宙の外惑星へ出て行って事故の発生確率が非常に大きいので、そこに出て行くスタッフたちはみんなクローンを地球に保存しておく。死んでしまってもすぐ事業が続けられるように。記憶は全部記録して保存している。その記憶を新しいクローンに移植する。そして帰ってくる。

死んでしまったアディーの次に新しいクローンがやってくる。みんな同じ人間が帰ってくると思って期待しながら待っている。ところが、クローンのもつ記憶は惑星にくる前の記憶。惑星にきてからの3年の部分は保存されていないから、やってきたA’には3年のブランクがある。惑星にいる人たちは同じ人が帰ってくると期待している。

主人公のアディがやってくる。みんな初めて見る顔だから「はじめまして」。みんなは「お帰りなさい。やっと帰ってきた」。時間的なギャップでドラマは進行していく。レグ・ボーンは前の彼女ととても仲がよかったけれど、それは惑星にきてからの話だから、A’はまったく普通のスタッフだと思っている。

アディは一角獣種という遺伝子組み替えでつくられた人種だということになっている。その特徴は頭のてっぺんから赤い毛が生えている。どうしてこのような人種をつくることにしたのかというと、長期の宇宙旅行や宇宙生活の中で、パニックを起こさないよう、感情を抑制する人種をつくろうと思った。ところが感情を抑制し過ぎて自己表現が非常に苦手な人種になってしまい、人から理解されることが少なくなってしまった。当時は自閉症という言葉はなかったけれど、言ってみればちょっとしたコミュニケーション不適合者になっている。

一角獣のキャラクターの設計はどうやってやったかというと、私も何を考えているかわからないと言われていて。いろいろな人とトラブルが起きて落ち込むのだけれど、まわりからはそうは全然見えないらしくて。「あんなこと言われてもあなたは平気なのね」と言われたり。平気ではない、一言言えればいいのだけれど、その一言が出てこない。なので言われっぱなしになる。でもつらいことはつらいから、たまっていく。あの人は冷たい、感情がないと誤解されているけれど、本当は感情はあるのだという作品が描きたいなとずっと思っていた。それがここにつながった。

これをたくさんの人に共感をもって読んでもらえた。結構みなさん誤解されたり、言ったことに違う解釈をされたり、そういう体験をもっている人はいるんだなと。

一角獣種にはいろんな特徴がある。記憶力がいいとか感情表現に乏しいとか、視聴覚範囲が非常に広いので地震の前兆の地鳴りが聞こえるとかもある。

レグ・ボーンはアディと恋愛していたことを思い出して、だんだん彼女が好きになっていく。でもアディの方は恋愛した記憶がない。小さいときにあなたは子馬を飼っていた。でも死んでしまったという話を聞いたことがあると言う。アディの大切な記憶だから滅多に人に話さないのだけれど、自分は聞いたと。今のA’の方は話した記憶はない。だから「あなたは勘違いしている。私はあなたにそんな話はしていない。」というように距離がある。

アディは可視聴覚範囲が人と違うので、視覚の平行現象が起こる、フレアが広がる。ほかの人より敏感に感じているというシーンです。真ん中に太陽があって、広がっている印象が強くない。カケアミというのですが、後ろに薄い線が入っている。これは指定してアシスタントがベタを塗ったり細かく描いてくれる。フレアのフラッシュの点は、ホワイトで点々と描いていると埒があかないので、先にマスキングテープを貼って、その上でホワイトを弾いてそれからテープを剥がす。うまく散らすと、こちらの方向、あちらの方向、円の方向といって、形ができていく。

だんだん二人の気持ちが通じて行くが、あるとき事件が起きるr。アディが流動氷の切れ目から地下に落ちてしまう。レグはアディを助けようと思って一緒に谷野底に滑り落ちると、前に死んだアデラドに出会う。つららで頭頂を貫かれているため一角獣の角のようみ見える。自分の愛した人はそこにいるので、レグはすごくショックを受ける。自分は錯覚していた、今の彼女(A’であるアデラド)は自分が愛していたアデラドではなかったと、転属を申し出て別のコロニーに行ってしまう。

ところが、そこで事故が起きて、彼は死んでしまう。死んでしまったという報告がこちらのコロニーに届く。アディはその報告を聞いて、自分のショックをうまく表現することができない。ものを食べられなくなり、眠れなくなって倒れてしまう。まわりの人が心配して「前にもこんなふうなことがあった。一角獣種は頭もいいし、記憶力もいいし、もっと適応力があると思ったけれど、意外とこんなふうに感情表現ができない、コミュニケーションがとれないせいで、どんどん餓死してしまった。

死んでしまったレグは帰ってくる。彼もまたクローンを地球においてきた。宇宙開発に必要な人材だから、それまでの記憶を入れられて、惑星にやってくる。彼にとっては初めてきた惑星。車の中に入ったら、若い女の子が自分を見てる。彼は初めて会うので誰だろうと思う。感情を出さない彼女が彼に出会って、涙が出てくる。この人に唯一の友達だった黒馬の話をしたい。あなただけに話したい。

萩尾望都スケッチ画集Ⅰ―「ポーの一族」と幻想世界―

11月に発売される予定の新潮社の「スケッチ画集」。
スケッチブックを本に出すことは、もう歳だから生き恥をさらしてもいいかと思って。昔ネームをつくったりするときに描き殴っていたもので、こんな形が本になるとは思わなくて。うれしさ半分恥ずかしさ半分。

物語はキャラクターを描くと、話がころがっていくことがよくあって、とりあえず、思いつくキャラクターを全部出してみようと思って。キャラクターが話し始めることもあるし、いろいろだけれど、せめぎ合いが面白い。顔を描いているときは、何を考えているのかなと思って描いている。

皆さんもいろんなスケッチブックを描かれることもあると思うけど、何かの役に立つことがあるのでとっておいた方がいい。
描いてないと忘れちゃうから読み直す。このときはこう考えていたんだとか。後で使うと思いながら忘れてしまったりとか。

「半神」は双子の女の子がいる。一人がすごくかわいいけれど、少し頭が悪い。もう一人はものすごく頭がいいけれど、顔が醜く、髪の毛も生えない。この二人は腰のあたりでくっついていて、一生離れることができない。二重胎児というキャラクター。醜い方の子は「なんで自分はこんな目に遭うんだろう。妹の方はかわいくてチヤホヤされているのに、私はいつも側にいてこの子の面倒をみなくちゃならない。私は不幸だ。」とすごく不満をため込んでいるのだけれど、くっついているからどこかよそに行くことができない。ずっと側にいていかなきゃならない。どんなに自分が不幸か、という話が前半に出てくる。

やがて医者がやってきて、二人は成長したからこれ以上一緒にいることはできない。切り離そう。ただし、妹の方は心臓がないから死んでしまう、と言われる。彼女は一つの心臓を妹と自分を育てていたのだけれど、成長したから無理だと言われるから、じゃあ妹は切り離そう。もともと要らない子だった。私は一人になって生き残る、と言ってすごく喜ぶ。

それで切り離す。ユージーは一人になって目が覚めてほっとする。もう妹はいない。そうしたら医者が妹の方は弱っていって、もうそろそろ死にそうだ。最後に会いなさいと言って、病室に連れて行く。病室に行って妹の顔を見たら、それはそっくり自分の顔だった。あんなにかわいかった、金髪のふわふわだった妹の顔がこれ?違うでしょう。これは私じゃないか。これは死ぬ、じゃあ私が死ぬのか?と混乱したまま妹は死んでいく。私の方は生き延びて、ちゃんと髪の毛が生えてきて、ほっぺたもピンクになって、成長していく。すっかり普通の女の子になって、美人になって、妹と同じような顔になっていく。鏡を見ると、鏡の中に自分が大嫌いだった妹の顔が写っている。彼女は誰だったんだろう?自分は誰だったんだろう?あなたは私の半分だった。私はあなたをとても憎んでいた。だけど同時にものすごく愛してもいた。そして、どうしていいかわからない過去の記憶が彼女にずっとつきまとう。

腕を動かしていると、何か思いつく場合が実際ある。指は不思議なもので、描いたり動かしたりしていると。スケッチブックに描いているうちにどんどん腕が動いている。何を考えているのかわからないけれど、指が考えているのかなと思うことがある。

質疑応答

Q. 先生の恋愛話ってないのでしょうか?

A. 小学校3年生、4年生だったかな?のときに1回失恋しました。クラス委員長の谷口くんという男の子。田舎だから男の子はみんな乱暴で、ペンで女の子を殴ったり、突き飛ばしたりする。谷口くんは委員長なだけあって、とても親切だった。5年生になってクラスが分かれた。別のクラスになっちゃった‥と思っていたら、あるとき渡り廊下で偶然会った。私はものすごくドギマギして、精一杯挨拶しなきゃと思って、ニコっと微笑んだら、パッとそっぽを向かれた。クラスが分かれた男の子に微笑んじゃダメなんだ‥。そんな体験を積み重ねていろいろ学んでいく。そういうときは教科書かなんか落として、拾ってもらってありがとうとか言って微笑んだ方が良かった。

Q. すごく勉強になりました。ありがとうございました。

※場内爆笑でした。

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