2026年10月28日~2027年2月8日に国立新美術館で開催予定の「少女漫画・インフィニティ 萩尾望都×山岸凉子×大和和紀 三人展」のキュレーターである吉村麗さんが1月20日ロンドン、22日パリで講演会を開催されました。
○ロンドンのジャパンハウスでの講演の模様
漫画は「世界に誇れる独創的な文化」日本の研究者が英国で講演(毎日新聞)
1月22日、パリの日本文化会館にて行われた講演を聴講された方にレポートを送っていただきました。メモから起こしたものなので、講演内容の一部のお話だそうです。あらかじめご了承ください。またミスほか問題がありましたら修正しますので、お問い合わせフォームからお送りください。

タイトル:講演会 少女漫画の世界 @ パリ日本文化会館
日時:2026年1月22日(木)18:00~19:30
会場:パリ日本文化会館小ホール
登壇:吉村麗(国立新美術館主任研究員)、Bruno Pham(Edisions Akata)
吉村さんが、お話しされたのは、大まかに2つ。
- 少女漫画って何?
- 国立新美術館「少女漫画・インフィニティ 萩尾望都×山岸凉子×大和和紀 三人展」について
少女漫画って何?
スクリーンは日本の代表的な少女漫画の雑誌の紹介。『マーガレット』(集英社)、『少女コミック』(小学館)『デザート』(講談社)
吉村さん:(本が出るまでの)フランスとの違いは、先ず雑誌に載ってから単行本になる。
ブルーノさん:フランスにも雑誌があったけど、今はなくなった。
吉村さん:日本の漫画家は、マンガ1ページにつき、いくらかを貰い、単行本が売れたら印税が入る。
ブルーノさん:フランスには、雑誌がないので(売れなかったら)作家が大変。
吉村さん:雑誌が、日本の漫画界を支えて来た。
少女漫画が、どうやって出来たか
吉村さん:少女漫画は、少年マンガから出来た。江戸時代の後、学校で少年と少女を一緒に学ばせるのは良くないと、男女が分かれたので、雑誌も少年と少女に分かれた。


スクリーン上は『少女界』『少女世界』『少女画報』『少女の友』の書影。
※写真はイメージです。画像が実際にスクリーンに投影されていたわけではありません。以下、本の写真は全て同様です。



「リボンの騎士」(手塚治虫)、「ママのバイオリン」(ちばてつや)、「銀の谷のマリア」(松本零士)
吉村さん:手塚治虫先生は、少女漫画をたくさん描いていた。「ママのバイオリン」はちばてつや先生、「銀の谷のマリア」は松本零士先生。



「ガラスの城」(わたなべまさこ)、「マキの口笛」(牧美也子)、「星のたてごと」(水野英子)
吉村さん:3人の作家が、少女漫画で活躍。わたなべ先生は赤本に載っていたので、雑誌に移った時にはすでに人気があった。ベビーブーム(1946~1949年)の世代がプロになって活躍したのが1970年代。



スクリーンは「ベルサイユのばら」(池田理代子)、「ガラスの仮面」(美内すずえ)、「デザイナー」(一条ゆかり)
吉村さん:日本のフランスのイメージは「ベルばら」。
ブルーノさん:フランスでは「ベルばら」はアニメから知られていった。
吉村さん:物語のテーマが広がったことも少女漫画の黄金時代と言われる所以かと。
「デザイナー」は、少女というより大人の女性向けなのに『りぼん』から出ている。『りぼん』にしては大人っぽい作品だと思う。
ブルーノさん:この頃、西洋文化の影響、外国を舞台にしたものが多かったことについて。
吉村さん:この時代は海外に気軽に行けなかった。日本の発展期だった(欧米を追いかけていた時期という意味だと思います)。今は、外国を舞台にしたものはあまりない。
国立新美術館の「少女漫画・インフィニティ 萩尾望都×山岸凉子×大和和紀 三人展」

吉村さん:萩尾先生、山岸先生、大和先生は少女漫画の黄金時代を支えた立役者。少女漫画がどういう役割を果たしてきたのか‥
ブルーノさん:萩尾先生は、ヨーロッパ。他のお二人は、日本が舞台の漫画。
吉村さん:先生方の希望でこの三枚の絵になった。この3人の先生を選んだことをどう思いましたか?
ブルーノさん:さすが日本人のエキスパートが選んだなと思った。萩尾先生と大和先生はフランス語でも他の国でも出版されているけど、山岸先生の作品は海外にないようだ。
吉村さん:昔は外国で出版されるのを嫌う作家さんもいた。印刷が左右逆になったり、翻訳がキチンと出来ているか判らないから。
吉村さん:少女漫画家は他にも大勢いるのになぜこの3人を選んだかといえば、多様感と少女漫画家としての長い人生をこれからも無限に表現していかれる作家さんだから。
ポーの一族

吉村さん:「ポーの一族」は40年後に続きを描かれたことで読者を驚かせた。フランスでのポーの一族の本が出た時はどうでした?
ブルーノさん:皆が待っていた。ネットで調べて知っていた。でも「トーマの心臓」は出版したのが早すぎて、当時は売れなかった。「ポーの一族」ならヴァンパイアのファンも買うと思って出版した。
※「ポーの一族」のページをスクリーンで見ながら説明。アランと最初に出会った場面のページなど。
吉村さん:フランスは吸血鬼ファンは、多いのですか?
ブルーノさん:ドラマも映画も小説もある。コンベンションもある。フランスでは「ヴァンパイア騎士」(樋野まつり)が、すごく売れた。
吉村さん:「ポーの一族」はエピソードや時代、場所も変わるし、主人公のエドガーがほぼ出てこない話もある。凄く良く組み立てられているのがスゴイ。
ブルーノさん:萩尾先生が最初に描いたのは、短い話だった。一作一作が編集や読者に評価されて、長くなった。
吉村さん:空間、世界観が、素晴らしい。
ブルーノさん:スクリーントーンをあまり使ってないのでは?手作業なのでは?(※ブルーノさんは、この点々とか‥と言っていたので、点描のことかな?と、思います。)
吉村さん:この頃、絵の表現の仕方が発達しました。絵のカメラがいっぱいある状態。空間、立体感が、3Dのよう。
トーマの心臓


ブルーノさん:「トーマの心臓」は来週発売します。
吉村さん:少女漫画としてはショッキングな始まりで(言っても大丈夫ですか?とブルーノさんに聞いてから)自殺してしまう。「トーマの心臓」について話そうと用意してきたけど、泣いちゃいそうなので、やめておきます。
山岸凉子先生の作品について
吉村さん:バレエブームが1950~60年代にあり、この頃バレエ漫画が5~6作あった。バレエをやっているというだけの話が多かったけれど、人生をかけてバレエをやっている、本格的に描いた山岸先生の漫画が大ヒットした。絵もリアルで身体性が優れている。山岸先生ご自身も(バレエを)やっているので教養が表れている作品。
吉村さん:フランスより日本の方がバレエやっている人が多い。
ブルーノさん:フランスでは、あまりやっている人がいない。
○「日出処の天子」
吉村さん:BLにも影響を与えた作品。フランスではBLの作品はどうですか?
ブルーノさん:BLが少女漫画の領域を取ってしまった感じになっている。
大和和紀先生について
吉村さん:「はいからさんが通る」は「ベルサイユのばら」や「ガラスの仮面」と同じくらい大ヒットした作品。主人公が自立し働いて恋をする話。主人公の洋服(袴)は着物と違ってすそが広がって足が開ける。
少女漫画は洋服にこだわり、ファッションが重要なキーになっている。
少女漫画は着替えるけれど、少年漫画、例えば「ワンピース」のキャラクターは着替えない(会場で笑い)
大和和紀先生は、コメディも得意で、必ずロマンスが入っている。
「あさきゆめみし」は、日本で学生が源氏物語を学ぶ時、学校の先生が生徒に薦めてみんな学校で知る。
ブルーノさん:(ハッキリとした描写を)言わない(描かない)けれど、日本には皆がわかる文化がある(男女のベッドシーンというか布団の中のシーンのことだと思います)。大和和紀先生は、それを髪の毛で表現したりしている。見せないけど、読者は分かる。
フランスの少女漫画の未来



「霧の中の少女」(花村えい子)、「A-Girl」(くらもちふさこ)、「バルバラ異界」(萩尾望都)
ブルーノさん:少女漫画の歴史を紹介したいから、このセレクションにした。



「少年は荒野をめざす」(吉野朔実)、「妖怪缶詰」(魔夜峰央)、「スターレッド」(萩尾望都)
吉村さん:たくさんの作家がいることを知って欲しい。ブルーノさんに頑張ってもらって‥
質疑応答の後、講演会は終了。その後、交流会ということで、飲み物と軽いおつまみが出たそうです。シャンパンやワインも。さすがフランス‥


「少女漫画・インフィニティ 萩尾望都×山岸凉子×大和和紀 三人展」のパンフレット(フランス語版)が会場入口で入場者一一人一人に配られていたそうです。

