2024年8月23日『芸術新潮』2024年9月号が発売されました。「大特集‐祝!画業55周年 萩尾望都―スケッチブックから読み解く、創作のひみつ」とつけられた萩尾先生の特集です。
→芸術新潮(新潮社)
→芸術新潮 2024年9月号 大特集・萩尾望都―スケッチブックから読み解く、創作のひみつ(萩尾望都作品目録)
萩尾先生のスケッチブックについては、これまでも「「ポーの一族」と萩尾望都の世界」(小学館 2019.12.20)の別冊付録に「萩尾望都の創作ノート」として公開されていました。また、「文藝別冊 萩尾望都」(河出書房新社 2010.5.14)にも一部収録されています。
今回の特集はまずはボリュームが多いことと初出のものを中心に掲載されていることが特徴だと思います。萩尾先生のスケッチブックはキャラクターの素描やそのプロフィール、シーンやプロットなど多くのものが書かれています。膨大な数のスケッチブックやクロッキー帖の中から厳選されたスケッチです。他にもいろいろある特集ですので、見所を書いていきます。
スケッチ
最初にエドガーや阿修羅王など人気のキャラクターが、初期作品から「ビアンカ」「小夜の縫う浴衣」「6月の声」「秋の旅」といった作品のスケッチが登場します。その後「銀の三角」「スター・レッド」「モザイク・ラセン」「海のアリア」「あぶない丘の家」「バルバラ異世界」「メッシュ」「エッグ・スタンド」「残酷な神が支配する」、バレエシリーズなど。服飾学校時代のデザインなども出てきます。
後半になって「ポーの一族」「トーマの心臓」「訪問者」「11人いる!」「東の地平・西の永遠」が登場します。細やかなキャラクター設定をされていることがわかります。
新たに発掘された作品
「サムが死んでいた」は「文藝別冊・萩尾望都」に3ページ収録されている作品と同じタイトルですが、今回収録されているものは設定を買えて書き直した16ページの作品(未完)です。萩尾先生が外部からの期待や評価で迷っていた時期に、初心に返り自由に描く楽しさを取り戻そうと描かれたものです。
インタビューとコラム
萩尾先生ご自身のインタビューも収録されています。これは、まさに「創作のひみつ」で、どうやって作品を生み出しているのか、具体的にスケッチブックを取り上げながら語られています。このインタビュー、漫画家志望の方には必読かと思います。
また、ヤマザキマリ先生のコラムではフィレンツェで多くの画家の素描を見ていらしたマリ先生が萩尾先生の“素描”の“紙と鉛筆からくる柔らかさ”について語られています。(※「少年よ」の表紙の少年は“オスカー”です。 訂正文がヤマザキマリ先生と『芸術新潮』の公式Xから出ていました。)
創作の舞台裏(鼎談)
萩尾望都先生のマネジャーとして知られる城章子さんのインタビューは、「文藝別冊・萩尾望都」にも収録されています。城さんと萩尾作品に度々登場するキャラクターのモデルでもあるアシスタントの中川さんと新マネジャーのナオコさんの3人の鼎談となっています。新マネジャーさんは「文藝別冊・萩尾望都」に登場した萩尾先生の妹さんの和歌子さんのお嬢さんです。現在、このお三方が萩尾先生の常駐スタッフなのですが、この方々の鼎談の司会を何故か私が務めております。お話が盛り上がってどんどん進むので、あまり役に立ってはいないのですが、たいへん楽しかったです。今回収録されたのは、4時間に及ぶ鼎談の一部です。それでも7ページもありますね。
お三方の会話から、萩尾先生の特殊な能力が次々登場します。尋常でない視覚的な記憶力、追い込まれたときに描くスピードのすごさ、進化し続けていく創作姿勢、そして普段の素顔について語ってくれています。
年譜
とても小さいですが、年譜の横にいろいろな写真が載っています。アンデスへの旅行やガラパゴス島の旅行、事故にあったモスクワ旅行時の写真、最後に5月の「マンガに感謝する会」で「フリージア」のケーキを前にしている萩尾先生もいます(多分初出です)。
萩尾望都スケッチ画集(仮)
2025年初夏、今回の特集をベースにして更に拡大させた書籍が刊行されると予告がありました。前の特集のときも「とんぼの本」になりましたので、そうでしょうとも!と思いました。楽しみですね。
目次
【大特集】祝! 画業55周年 萩尾望都
スケッチブックから読み解く、創作のひみつ
巻頭グラフ
萩尾望都インタビュー
“出発点”としてのスケッチブック
いま、物語が生まれる
I ひらめきとキラメキの初期作品
II あの名作SFが生まれた時空
III 美しくも凄絶なるドラマの深淵
COLUMN
1 ファッション画は、少女マンガの扉を開く~デザイン学校時代の課題を初公開!
2 時々は雑誌スクラップも~ファッションからロックスターまで
特別寄稿
“線”に宿る愛 対話の空間としての素描
文 ヤマザキマリ
不朽の三大名作、そのはじまり
I ポーの一族
II トーマの心臓・訪問者
III 11人いる!・東の地平 西の永遠
発掘! 未完のSFマンガ「サムが死んでいた」
創作の舞台裏を教えてください!
マネジャー&アシスタント座談会
城 章子/中川佳子/ナオコ 司会:永井祐子
略年譜
萩尾望都 創作の軌跡