「総特集 佐藤史生」に萩尾望都先生が8pのコミックエッセイを寄稿

2024年6月3日発売の「総特集 佐藤史生―少女マンガが夢見た未来」に萩尾望都先生が「佐藤史生さんの思い出」という8ページのコミックエッセイを寄稿されています。萩尾先生が佐藤史生先生との出会いからお別れまでを4コママンガで描かれています。4コママンガを8ページって結構長くて、1~15まであります。

お二人の出会いは大泉で、ファンレターを読んでおもしろいと思って遊びに来ませんか?と萩尾先生が声をかけました。やってきた佐藤史生さんはあっという間に仲間になります。増山さんと意気投合している描写に胸が詰まりました。もうお二人とも故人なんだなと思って。あの頃二人は若くて朝まで話した…という感じがすごく伝わってきます。

大泉には坂田靖子さん、花郁悠紀子さん、池田いくみさん、城さんと次々増えていく。萩尾先生がその大泉時代を楽しかったと懐かしそうに振り返っている。大泉本(「一度きりの大泉の話」)の中にもそういう描写はたくさんありました。だからこそ、その結末が悲しかった。それでも「一度きり」と言って語ったその後に、こういう姿を描いてくださっていること、ちょっと感無量なところもあります。

佐藤史生さんは1971年に萩尾先生たちと出会って、1977年にデビューするまで時間がかかりましたが、贅沢な修業時代だったのかもしれませんが、モチベーションの問題で実力は充分だったのだろうと思います。だから「描くことは全部描いた」と最初の病気の後、元気になっても創作を再開はしなかったことは納得できるような気もします。

佐藤史生さんの原稿の数奇な運命についてはいろいろ聞いていますが、最終的に収まるところに収まってよかった。その中から発掘された萩尾先生のスケッチブックやイラストは生前佐藤史生さんが大切に保管されていて、それが萩尾先生の元に戻ってきている。“ロンリの時代”と萩尾先生は呼んでいますが、佐藤さんの言葉が強かったせいかご自分は嫌われているのではと感じていたけれど、そのイラストを見ていると、そうではなかったことに気付いた萩尾先生。「自分の絵を大切にしていた」ということはいかに自分が大切に思われていたかの証し。マンガ家さんらしい…

本全体のお話。佐藤史生さんが故人なので生前のインタビューやエッセイなどが多数収録されています。関係者インタビューの中ではやっぱり巻頭にくるだけあって坂田靖子先生のイキイキとしたお話がすごくよかった。メール・インタビューだそうですが、まるでお話なさっているかのよう。私も坂田先生のホームページでご逝去の報を知りましたが、あのページはもうないんだ…ということをこの本で知りました。

個人的には徳永メイさんのインタビューが嬉しかった。晩年の史生さんの看病をされ、お見舞いの連絡など友人の皆さんへ橋渡しされていたと聞いています。お元気だった頃の佐藤史生さんの様子や本当はどういう人だったのかがよく伝わってくるインタビューでした。

『グレープフルーツ』に載っていた2作もぼんやり記憶があります。『プチフラワー』がまさにそうですが、萩尾先生を追ってると、その雑誌には佐藤史生さん載ってることが多くて、自然と読んでいたと思います。私はリアルタイムではないことも多いのですが。

最後の作品リストは「佐藤史生データベース」からと書いてありました(インターネットアーカイブ)。1997年頃「佐藤史生データベース」という素晴らしい個人サイトがあったのです。私も1997年にこのサイトを立ち上げていますので、管理人の坂本さんとメールをやりとりし、相互リンクを貼ったり、情報を教えていただいたり、送ったりしていました。このサイトの「人様のマンガに現れる佐藤史生」とか「出典・モトネタ」がとても良かった。萩尾先生のマンガによく出てきますしね。これを私がつくるとなると、大変なことになる…と思って手を出していません。

1999年を最後に更新されなくなり、それでもかなり長い間そのままにされていたのですが、プロバイダの事情だと思いますが、なくなっていました。こちらの坂本さんや花郁悠紀子さんのところの有里さんや、山岸凉子先生のところのねばさんや、そういう個人サイト黎明期のファンサイトの仲間は懐かしい思い出です。図書の家さんは今はプロなのですが、当時からの大切な人たちです。

「総特集 佐藤史生―少女マンガが夢見た未来」
2024.6.30 河出書房新社 ISBN978-4-309-25755-6

目次

Illustration Gallery………4, 70, 104
坂田靖子メールインタビュー………21
佐藤史生からの手紙………36
Special Guests 萩尾望都………40
木原敏江………48
森脇真末味………50

佐藤史生かく語りき
インタビュー 1981年/1982年/1983年………54
インタビュー 1982年………196
エッセイ 1989年………197
イラストエッセイ 1985………198

徳永メイ インタビュー 「史生さんは、「夢みる惑星」のイリスのような人です」………89

妹 佐藤史生(佐藤ちょ子) の思い出………96

佐藤史生 短編傑作選
今こそ読もう! 佐藤史生作品ガイド………101

佐藤史生のスケッチブックから………106

Comics
雨の竜………109
青猿記………145

作品リスト………200
佐藤史生関連資料リスト………204
年譜………206

80年代、少女マンガSFが到達した高み。『総特集 佐藤史生』『傑作短編集 夢喰い』6月3日同時発売!(PR TIMES)

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