「萩尾望都スケッチ画集III―「トーマの心臓」とドラマ世界」が刊行

2026年7月29日「「萩尾望都スケッチ画集III―「トーマの心臓」とドラマ世界」が刊行されました。昨年の11月から始まった「萩尾望都スケッチ画集」全3巻がそろいました。膨大なスケッチブックから萩尾望都の創作の泉に迫るこのシリーズも考えて見たらすごい話です。紙の画集が出ないというこの時代にスケッチで3冊刊行してしまった、というのが驚きです。

萩尾望都スケッチ画集III―「トーマの心臓」とドラマ世界―(萩尾望都作品目録)

表紙は「トーマの心臓」。これは誰?と思われることと思いますが、まだキャラクターを考えている最中のスケッチで、中央はヘルベルトで、右上はトーマ、黒髪の波打ってるのがユーリです。この辺は本編とは変わっています。そういう話も巻末の著者コメントに入っています。
扉絵の「残酷な神が支配する」の真っ赤なジェルミに度肝を抜かれました。使われなかった予告か扉絵だそうですが、スケッチなのにカラーが混じるのはそういう理由もあるのですね。

この巻は「トーマの心臓」がメインですが、ネーム丸ごとというのが出てきて量の多さに圧倒されました。“「トーマの心臓」習作原稿より”の部分です。見覚えのあるシーンのネームに、線の多さ、特に動きのあるシーン、考え抜かれて描かれているのだなと感じました。シュロッターベッツの見取り図はスタジオライフ「トーマの心臓」2010年の際に演出家の倉田さんと一緒に考えたものだそうです。「小鳥の巣」のときもそうですが、舞台となる学校の中の建物等はだいたいの配置は考えて描かれるようで、この見取り図はそれが更に詳細になったバージョンと思いました。

そうやってじっくり一つ一つの絵を眺めながら、巻末の解説を読みながら、とやっていると時間がどんどん過ぎていきます。全部話していると長文になりすぎるので、割愛します。

年譜もとても写真が多く、私もこれまで見たことのないお写真が多々あり、これは大きくして見たいなと思いました。やっぱり「文藝別冊 大特集・萩尾望都」の改訂版のような本は欲しいです。年譜だけで1冊つくれそう。

インタビューでは創作についてていねいに語られていて、スケッチブックの中に「メッシュ」が多かったというお話があり、この時期、絵を変えようとされていた気配を読者的には感じていたので、習作をたくさん重ねられたのではないかなと思いました。「MOVEMENT」という短編がありますが、これからも人体の動きについて研究を重ねられていたことがうかがわれます。

最後にインタビューの後ろにあった萩尾先生の少女漫画についての言葉を書き起こしてみます。正確ではないかもしれません。

おそらくはどんな(あらゆる)少女漫画にもあるあの
なんともいえないやさしい画面のめっきが
好きなのだ。主にそれは表情だったり髪の線
だったりスカートだったり指先だったりするが
その面からくみとれる“わたがしのような女の子っぽさ”が
私は好きなのだ。
甘くてはかなくてやわらかい色をしている

「萩尾望都スケッチ画集III」p195

→「萩尾望都スケッチ画集III―「トーマの心臓」とドラマ世界」(新潮社)

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